Jakob Steiner による シュタイナーの公式(Steiner formula) と呼ばれる、現代の凸幾何学でも基本定理のひとつ。
「Quermass(クヴェアマース)」はドイツ語で「横断的な測度(寸法)」といった意味です。 この $W_i$ は、実は「$K$ を $i$ 次元的な平面で切ったり投影したりしたときの平均的な大きさ」(積分幾何学的な平均値)として解釈できるため、この名前がついているらしい。$V$を$\mathbb{R}^n$における普通 $n$次元体積として書くことにすると、
V(K + \alpha B) = \sum_{i=0}^n \binom{n}{i} W_i(K) \alpha^i
\]
このシュタイナーの公式において、$\binom{n}{i}$ という二項係数がつくのも、混合体積の多重線形性($n$ 個の引数のうち、どこに $B$ を入れるかの組み合わせ を表す。
\[
W_i(K):=V(\underbrace{K,\dots,K}_{n-i},\underbrace{B(1),\dots,B(1)}_{i})
\]
は 第$i$クヴェアマース積分(quermassintegral)と呼ばれる。
これの確率場(ガウス測度)バージョンがA Gaussian kinematic formula と呼ばれている:
Jonathan E. Taylor. “A Gaussian kinematic formula.” The Annals of Probability, 34(1) 122-158 January 2006. https://doi.org/10.1214/009117905000000594
日本語文献: 数理科学2020年九月号 確率場の幾何
ちなみに、宇宙マイクロ波背景(CMB)の宇宙の温度のゆらぎを観測する時のガウス性を検定するのに使っているらしい
WMAPデータのミンコフスキー汎関数解析から探る宇宙初期ゆらぎの非 ガウス性への制限
滑らかなガウス確率場 $(f \colon M\to\mathbb{R}^k)$($M$ は $n$ 次元の滑らかな多様体)を考え、レベル集合や超レベル集合
\[
A_u=\{x\in M:\ f(x)\in D_u\}
\]
(例:(k=1) なら ($D_u=[u,\infty)$)のLipschitz–Killing 曲率(= 固有体積)を見ることになる。(この下の説明は$k=1$での話。)
レベル集合 (A_u={f\ge u}) の期待オイラー標数は
\[
\mathbb{E}[\chi(A_u)]=\sum_{j=0}^{n}\mathcal{L}^j(M),\rho^{n-j}(u)
\]
となります。
ここで (\rho_m(u)) はエルミート多項式と( 標準正規分布の密度関数 ($\varphi(u)$) ) を使って
\[\rho_m(u)=(2\pi)^{-(m+1)/2} H_{m-1}(u)e^{-u^2/2} \quad (m\ge1)
\]
\[
\rho_0(u)=1-\Phi(u)
\]
($(\Phi)$:標準正規分布関数)という形になります。
さて、話を戻すと、
混合体積 (V(\cdot)) を使って
* (K) を (n-i) 回
* 単位球 (B(1)) を (i) 回
入れたものが$W_i(K)$である.
凸体 ($K \subset \mathbb{R}^n$) と単位球 (B) に対し、
\[
K + \alpha B
\]
(= 距離 (\alpha) だけ外側へ膨らませた集合)の体積は
\[
V(K+\alpha B)
\]
が (\alpha) の次数 (n) の多項式になります。
これはミンコフスキー加法と体積の性質から導かれる事実で、
係数が クヴェアマース積分(Quermassintegrals) になる。
\[
V(K + \alpha B) =\sum_{j=0}^{n} \kappa_{n-j} V_j(K) \alpha^{n-j}
\]
ここで$V_j(K)$は固有体積と呼ばれる
\[
V_j(K)=\frac{\binom{n}{j}}{\kappa_{n-j}}W_{n-j}(K)
\]
のことである。また、各$m$に対して$\kappa_m $は
\[
\kappa_m = W_j(B)
\frac{\pi^{m/2}}{\Gamma!\left(\frac{m}{2}+1\right)}
\]
のことである。特に係数比較をすることで、
\[
V_j(B) = \frac{\binom{n}{j} \kappa_n}{\kappa_{n-j}}
\]
がわかる。
-
$j=3$ (体積):
$$V_3(B) = \frac{\binom{3}{3}\kappa_3}{\kappa_0} = \frac{1 \cdot \frac{4}{3}\pi}{1} = \frac{4}{3}\pi$$→ 単位球の体積
-
$j=2$ (表面積の半分):
$$V_2(B) = \frac{\binom{3}{2}\kappa_3}{\kappa_1} = \frac{3 \cdot \frac{4}{3}\pi}{2} = 2\pi$$→ (半径$1$の)球の表面積は $4\pi$ なので、その半分になっている。
-
$j=0$ (オイラー標数):
$$V_0(B) = \frac{\binom{3}{0}\kappa_3}{\kappa_3} = \frac{1 \cdot \kappa_3}{\kappa_3} = 1$$→ 凸集合なので 1。
固有体積 幾何学的意味 (V_3(K)) 体積 (V_2(K)) 表面積の 1/2 (V_1(K)) 平均幅に比例 (V_0(K)) オイラー標数(凸体なら1)
\[
F(K) =\left.\frac{d}{d\alpha}V(K+\alpha B)\right|_{\alpha=0}
\]
これは直感的にも:
「薄い厚み (\alpha) だけ外側に皮をつけると
体積は 表面積 × (\alpha) だけ増える」
という意味になります。
実際に多項式を微分すると、
\[
V(K+\alpha B) =V(K) + F(K)\alpha + \cdots
\]
となり、
\[
F(K)=\kappa_1 V_{n-1}(K).
\]
一次係数が表面積に一致します。
実際、
$n=3$ のとき
\[
F(K)=\kappa_1 V_2(K).
\]
\[
\kappa_1=2
\]
なので
\[
V_2(K)=\frac{1}{2}F(K).
\]
である。
具体的には次のような
偏極化公式(polarization identity)を使って示す:
多面体 $(P_1,\dots,P_n\in \mathcal P^n) $に対して
\[
V(P_1,\dots,P_n)= \frac{1}{n!}\sum_{k=1}^{n}(-1)^{,n-k} \sum_{1\leq r_1<\cdots<r_k\leq n}V(P_{r_1}+\cdots+P_{r_k})
\]
これを用いる。
\[
V(\alpha_1P_1+\dots+\alpha_mP_m)= \sum_{1\leq i_1,\dots,i_n \leq n} \alpha_{i_1}\dots\alpha_{i_n} V^{(n)}(P_{i_1},\dots,P_{i_n})
\]
混合体積$V(P_1,\ldots,P_n)$は、
* ($n=1$) では区間の長さ
* ($n\ge 2$) では
「法線方向ごとに、低次元の混合体積を足し合わせる」
n 次元の体積を 境界面(法線方向)に分解して $(n−1)$ 次元の混合体積に落として定義されている。
平行移動不変 : 各 (P_i) を別々に平行移動しても値は変わらない
対称性:
\[
V^{(n)}(P_1,\dots,P_n)
\]
は引数を入れ替えても同じ
(これと一緒に
\[
\dim(P_1+\dots+P_n) \le n-1
\]
なら混合体積は $0$が導かれる。)

この図は、2つの長方形 $K$ (水色) と $L$ (黄緑) を足し合わせたとき(ミンコフスキー和 $K+L$)、全体の面積 $(a+c)(b+d)$ がどのように分解されるかを示しています。
-
青色の部分 ($ab$): $K$ 本来の体積 $V(K)$ です。
-
緑色の部分 ($cd$): $L$ 本来の体積 $V(L)$ です。
-
オレンジ色と紫色の部分 ($ad$ と $bc$): これらが、公式 $V(K+L) = V(K) + 2V(K, L) + V(L)$ における $2V(K, L)$ の正体です。
つまり、\[
2V(K, L) = ad + bc
\]
になっている。これは上の公式からも導けて、上の公式は$n=2$の場合、
凸体を2つ:
\[
P_1=K,\quad P_2=L
\]
一般公式は
\[
V(\alpha_1P_1+\alpha_2P_2)=\sum_{1\le i_1,i_2\le 2} \alpha_{i_1}\alpha_{i_2} V^{(2)}(P_{i_1},P_{i_2})
\]
添字の組は:
\[
(1,1),(1,2),(2,1), (2,2)
\]
したがって
\[
V(\alpha_1K+\alpha_2L) = \alpha_1^2V(K,K) + \alpha_1\alpha_2V(K,L) + \alpha_2\alpha_1V(L,K) + \alpha_2^2V(L,L)
\]
混合体積は対称なので
\[
V(K,L)=V(L,K)
\]
よって
\[
V(\alpha_1K+\alpha_2L)= \alpha_1^2V(K) + 2\alpha_1\alpha_2V(K,L) + \alpha_2^2V(L)
\]
ここで
\[
V(K,K)=V(K),\quad V(L,L)=V(L)
\]
に注意する。現在の例は、$\alpha_1,\alpha_2 $ともに$1$なので
\[
V(K+L)= V(K) + 2V(K,L) + V(L)
\]
なぜ、$V_0$ を「オイラー標数」と呼ぶのかというと、単一の凸体だけではなく、それらを組み合わせた凸集合の有限和集合を考えるときに、この定義がトポロジー的なオイラー標数と完全に一致するからです。
オイラー標数には、以下の加法性(包含排除の原理)を満たす。
-
$A$ も $B$ も凸なら、それぞれのオイラー標数は $1$ です。
-
もし $A \cap B$ も凸(または空ではない)なら、そのオイラー標数も $1$ です。
-
すると、$\chi(A \cup B) = 1 + 1 – 1 = 1$ となり、つながった1つの塊として正しくカウントされます。
-
もし $A$ と $B$ が離れていれば、$A \cap B = \emptyset$(オイラー標数 0)なので、$\chi(A \cup B) = 1 + 1 – 0 = 2$ となり、「塊が2つある」ことを正しく示します。
参考:
A Course
on
Convex Geometry
Daniel Hug, Wolfgang Weil
University of Karlsruhe
revised version 2009/2010
January 24, 2011


